がんで障害年金を受給するためのポイント

抗がん剤の副作用による障害も認定の対象になります

がんで障害年金を受給するためのポイント

悪性新生物の認定対象は、抗がん剤投与による副作用を含みます。

悪性新生物の等級(障害認定基準)

1悪性新生物の障害認定基準

ガンの治療も日進月歩に進化してきています。早期治療により普通に暮らせる方も多く、「がん」を発症したことをもって障害年金を受給できるわけではありません。しかし、ガンの病状が再発や転移などが生じ進行してしまい、日常生活や労働に影響が出てしまった時には、障害年金を受給できる可能性が出てきます。
一般状態区分表による5段階評価で、その人の全身の障害が、日常生活や労働にどの程度の制限となっているかを表し、等級を決定する目安です。

悪性新生物による障害の程度を一般状態区分表で表すと次の通りです。
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの
例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

障害の程度を下記等級に当てはめてみてください。

障害等級に相当する障害の程度の例示

1級 著しい衰弱又は障害のため、一般状態区分表のオに該当するもの
2級 衰弱又は障害のため、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの
3級 著しい前進倦怠のため、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

あくまでも上記は目安で、一般状態区分による日常生活能力の'ア~オ'の程度だけでは、とても曖昧なものになってしまいます。認定に当たっては組織所見とその悪性度、一般検査及び特殊検査、画像診断等の検査成績、転移の有無、病状の経過と治療効果、ステージの記載等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等により、総合的に認定されます。

2 悪性新生物の認定対象は、抗がん剤投与による副作用を含みます

次に悪性新生物による障害の認定対象について見ておきます。以下のアイウに対し、どの程度の障害があるかで等級が決まります。

【悪性新生物の認定対象は以下の3つです】
ア 悪性新生物そのもの(原発巣、転移巣を含む)によって生じる局所の障害
イ 悪性新生物そのもの(原発巣、転移巣を含む)による全身の衰弱または機能の障害
ウ 悪性新生物に対する治療の結果として起こる全身の衰弱または機能の障害

悪性新生物の場合、部位を特定できない場合があり、認定対象をアイウのように総合的に判断する総合認定がとられます。
'ア'の局所の障害とは、食道がんなどで経口摂取ができず、そしゃく機能を欠く場合などです。ガンがある局所の障害により認定されるケースよりも、'ウ'の「治療の結果として起こる全身の衰弱または機能の障害」、つまり、抗がん剤などの治療が原因(抗がん剤の副作用)で起こる全身衰弱・機能障害が認定対象となるケースが多いかもしれません。
'イ'は、再発や転移などがありがん細胞が増殖して身体が弱った状態、抗がん剤治療が終了し緩和ケア等に入ったような状態をいいます。ガンの障害年金で認定されるケースは'イ'、'ウ'によるものが多いようです。
診断書にどのような治療経過(抗がん剤投与をしていて)で、それに対してどのような全身の機能の障害・症状があるかを主治医に詳しく伝え、反映してもらう必要があります。

障害年金で審査される内容ついて

1診断書の表面-「一般状態区分表」の記載

結論言うと、悪性新生物専用の診断書はありません。従って、上記のその他の障害用診断書様式120号の7を、基本的に使用することになります。

診断書(血液・造血器・その他の障害用)(PDF 1,541KB)
診断書(血液・造血器・その他の障害用)(PDF 1,541KB)

悪性新生物専用の診断書はありません。従って、その他の障害用診断書様式120号の7を基本的に使用することになります。

悪性新生物の等級決定にあたり、考慮される「一般状態区分表」による5段階評価については、診断書(血液・造血器・その他の障害用)表面の真ん中⑫に記載されます。

2診断書の項目・内容についての解説(裏面)

診断書(血液・造血器・その他の障害用)(PDF 1,541KB)
診断書(血液・造血器・その他の障害用)(PDF 1,541KB)

診断書の裏面【検査成績】の欄に、ヘモグロビン値や腫瘍マーカーの異常な値を検査結果を主治医に記載してもらう必要があります。しかし、検査結果に異常な結果がなくても、抗がん剤治療による全身衰弱、全身倦怠感は生じることがありますので、自覚している症状を出来るだけ詳細に医師に伝え、診断書の所見欄に記載してもらうようにして下さい。頭痛、吐き気、めまい、副作用等の症状を出来るだけ詳細に記述することによって、日常生活能力の困難さや、労働能力の無い説明に繋がります。口頭で先生に伝えるだけでなく、"こういった症状"があることをメモにして渡すことをおすすめします。

3悪性新生物の診断書を追加する場合

悪性新生物の請求時には、診断書(血液・造血器・その他の障害用)(PDF 1,541KB)を使用することが殆どですが、それ以外の種類の診断書を添付することで、その障害状態を適切に反映できる場合があります。例えば、、肺がんの場合、診断書(呼吸器疾患の障害用)(PDF 5,544KB)様式120号の5を追加し、診断書(血液・造血器・その他の障害用)(PDF 1,541KB)と併せて請求時に提出します。ただ、肺の呼吸器の検査をしていないこともあり、また行っても異常な検査結果がないこともありますので、診断書(呼吸器疾患の障害用)を提出するか否かについて、主治医とよくご相談をしてください。
他の悪性新生物に関して、追加する診断書の種類に以下のものがあります。

がんの種類 追加する診断書の種類
肺がん 呼吸器の障害用の診断書様式120号の5
食道がん、咽頭がん そしゃく・嚥下機能用の障害用の診断書様式120号の2
骨転移に伴う歩行障害、麻痺 肢体の障害用の診断書様式120号の1

診断書以外にも、「病歴・就労状況等申立書」は、請求者本人の意見が反映される書類ですが、診断書に反映されていない、病気にかかってから今までの「症状・病状と通院歴」、「日常生活の影響」、「就労の状況」などを請求者が主張をすることによって初めて、障害状態に至るまでの全体的な流れを読み取ることができます。

病歴・就労状況等申立書の作成のポイント

がんは会社の健康診断などで発覚するケースも多いです。健診結果が出たころや、不調が現れ始めたころから、現在までの病歴・通院歴、就労へどう影響し、働くことが困難になったか、日常生活の様子を記す必要があります。認定要領には、検査結果以外にも、転移の有無、病状の経過と治療効果等を参考にして、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するとされておりますので、発病してから現在までの3つのポイントを必ず、書くようにしてください。

  • 具体的な症状・治療歴(転移の時期も含む、病院を転院したらその理由等)
  • 日常生活の状況
  • 就労の状況(勤務中・勤務後の症状・容態、職場から受けている支援や配慮、有給や休職取得について)

原則として、5年おきに区切って記載しますが、その間に転院があれば、5年ごとに限らず、通院していた病院ごとに記載する必要があります。

病歴・就労状況等申立書(PDF 1,377KB)
病歴・就労状況等申立書(PDF 1,377KB)

また、「病歴・就労状況等申立書」は、診断書と整合性を求められます。つまり、「病歴・就労状況等申立書」は、診断書の記載が、病歴・就労状況等申立書と異ならないようにすることが必要です。主治医に詳しく症状などを伝えて、記載してもらうように、必要であればメモ等を渡すことをおすすめします。

悪性新生物の初診日と受給について

1悪性新生物の初診日について

最初に、「初診日がいつか」ということを確定します。ガンの初診日は、注意が必要です。

ガンの場合、初診日の決定が難しいのですが、健康診断の結果により初めて異常の所見が見つかるケースが多く、健診日が初診日になることはもっともであるように考えられます。
しかし、このような場合、「健康診断を受けた日」は原則として初診日になりません。健診日を初診日とする取扱いについては、平成27年10月より変更されており、原則として「初めて治療目的で医療機関を受診した日」を初診日とする取り扱いに改められました。よって、健診結果を受け異常を指摘され、(次の)病院で初めて治療目的で診察を受けた日が、初診日になります。また、がん告知を受けた日が同じ日でなければ、がん告知を受けた日が初診日にはならず、健診後に「初めて治療目的で医療機関を受診した日」が初診日となります。
初診日は、【保険料納付要件】【年金加入要件】を確認するための基準になるので、最初に、初診日の証明をすることは必須になります。
【保険料納付要件】とは、①か②のどちらかの要件を満たす必要があることを言います。

①初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの直近の1年間に保険料の未納がないこと。※ただし、初診日が令和8年4月1日前で、65歳未満であること(特例)。

②初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち 3分の2以上の期間を「納付済」か「免除」されていること。

【年金加入要件】とは、原則として、加入している年金の被保険者期間中に初診日のある傷病であることが必要です。「初診日」とは、障害の原因となった傷病について、「初めて医師等の診療を受けた日」をいいます。
国民年金の被保険者とは、20歳以上の無職、学生や自営業(第1号被保険者)・扶養されている配偶者(第3号被保険者)で、厚生年金の被保険者とは、会社員や公務員等(第2号被保険者)です。
初診日に厚生年金の被保険者であれば、障害厚生年金もあわせて受け取ることができます。
なお、「20歳到達日前(厚生年金被保険者を除く)」、または「被保険者であった者で、国内在住の60歳以上65歳未満」に初診日がある場合、年金加入要件は問われません。
「初診日」において、どの年金制度に加入しているかにより、年金額が変わるので、その初診日を証明することが非常に重要になります。
【障害程度要件】とは、障害認定日において、一定の程度の【障害の状態】にあることです。
「障害認定日」とは、この日までに重い障害が継続し、障害の程度の認定を行うべき日をいい、その障害の原因となった傷病の初診日から起算して1年6カ月を経過した日、または、1年6カ月以内にその傷病が治った場合においては、その傷病が治った日(症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を含む)をいいます。

受給のための3要件についてよく知る Click

2障害年金の受給金額について

障害の程度 初診日に加入していた年金制度
厚生年金・共済年金(同時に国民年金にも加入しています)
2階部分 国民年金1階部分
1級
他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態。活動の範囲がベッドの周辺に限られる
1級障害厚生年金
(2級障害厚生年金の1.25倍)
1級障害基礎年金
(2級障害基礎年金の1.25倍)
R5年度で993,750
2級
必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害の状態。活動の範囲が家屋内に限られる
2級障害厚生年金
(報酬比例の年金と同額)
2級障害基礎年金
R5年度で795,000
3級
労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態。日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある
3級障害厚生年金
(2級障害厚生年金と同額)
最低保障額あり
R5年度596,300
なし

初診日において厚生年金保険に加入していれば、1級から3級までの年金があり、1級、2級の場合、障害基礎年金(1級993,750円、2級795,000円)に障害厚生年金が上乗せされます。3級の場合には最低保障額596,300円(令和5年度)があります。
精神疾患は症状に変動があるため、症状固定を要件とする障害手当金についておおよそ対象外となります。

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初診日主義について

障害年金の受給要件は、"初診日主義"と言われ、初診日を証明するエビデンスがなければ、年金受給への途が途絶えてしまうこともしばしばあります。そういうことにならないためにも、レセプト、診察券、任意保険の請求書、傷病手当金の請求書など、診察を受けた証明になるものは普段から保管を心がけて頂けるようお願いします。

障害年金の社会保険労務士にご相談・ご予約ならひろコンサルティングオフィス。LINE・ご相談フォームは年中無休・24時間対応です。
045-550-7102(電話受付時間9:00~17:15)
同じ目線で親身なヒアリングを心がけて適切なアドバイスをさせていただきます。受給判定のためのフォームをご用意しております。こちらからのご連絡をおすすめいたします。受給判定のお問い合わせフォーム。初回相談無料です。
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